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夏休みの読書

ゴールドマン・サックスの経営陣が、夏休みにお勧めの本を紹介します。

植田 栄治 (ゴールドマン・サックス証券株式会社取締役)


15 AUG 2016


デフレの正体  ー  藻谷浩介

今でこそGDPの成長には労働人口比率の増加が重要であることは定説になっていますが、長らく、多くの人がその原因を理解できていませんでした。日本がデフレ経済に陥った原因を突き止め、明快に解説しているのが2010年に出されたこの本です。日本と同様、他の先進国も労働人口比率が頭打ちになり、低下し始めていることを踏まえると、なぜ2008年にアメリカ発でリーマンショックが起きたか(アメリカの労働人口比率のピークアウト)、リーマンショック後8年たってもなぜアメリカの長期金利は1.5%を切っているのか(更なる老齢化に伴う潜在成長率の低下)、ヨーロッパはなぜマイナス金利に踏み切ったのか(ヨーロッパ各国は2005-2010年に労働人口比率がピークアウト)、中国はなぜ潜在的に大きな問題になりえるのか(2014年以降労働人口比率の急低下)など、現在進行形の謎の多くが非常に簡単に理解できます。更に低成長が人口構成に起因するとすれば、当然解決に相当の時間がかかります。世界中の中央銀行は長期にわたって超金融緩和政策を取り、資本主義やお金そのものに対する考え方にも影響が出始めています。最近の金の高騰はまさしくそれを反映していると思います。この本は今後の世界を見通す上での基本的な考え方を示してくれる、分かりやすい状況分析本だと思います。


友清 寛之 (ゴールドマン・サックス証券株式会社証券部門マネージング・ディレクター)


15 AUG 2016


小さき者へ  ―  有島武郎 

「行け。勇んで。小さき者よ」というフレーズで有名でしょうか。母を亡くした幼い我が子達に対する、父親からの真情溢れるエールです。ごくごく短い、ストレートな文章ですが、一人の父親として子供達に伝えたいメッセージに強く共感しました。子供達が成長し、(肉体的には)小さき者ではなくなり、自己主張も始めて色々悩ませてくれるようになった今でも、読む度にこのメッセージに首肯し、改めて子供達と真摯に向き合えますし、また時折、厳しかった亡父のことを考えたりもします・・・ご家族と過ごす夏休みに、是非読んでみて下さい。

アダム・スミス『道徳感情論』と『国富論』の世界  ー   堂目卓生

昔、学校で習ったアダム・スミスと言えば『国富論』、「見えざる手」の人。市場には調節機能があるので、個人が各々の利益を追求することが、結果的には社会全体の富の発展に資する、といった思想の人というイメージでしたが、その人による「道徳」という一見対極的なテーマを扱った著作があると知って興味を持ちました。本書はスミスが『国富論』で示した社会システムの前提として、個人はどのような存在であるべきと考えていたかを解説してくれています。豊かさへの欲求を肯定しながら、そもそも人はなぜ富を求めるのか、究極的に求めるべきものは何かについてスミスがどう思案していたかを知ることができ、考えさせられた一冊でした。

 

桐谷 重毅 (ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社代表取締役社長)


10 AUG 2016
 

史記  ―  司馬遷

BC94年からさかのぼること2500年にわたる中国史の大作。主要な部分が編年体でなく紀伝体で構成されており、歴史上の人物が(王侯貴族だけでなく泥棒や刺客まで含まれている)どう生きて、そして何のために死んでいったのかを描いている。もし自分ならどう行動するか考えながら自分の好きな章を繰り返し読むようになった。著者の人生もドラマティックである。罪に問われて死罪となった身を宦官になることを選択して生き延び、その恥に耐えながらこの本を完成させたのである

銃・病原菌・鉄  ―  ジャレット・ダイアモンド

ヨーロッパ民族は銃と鉄と、そして何よりも病原菌への耐性の強さで他大陸の民族を征服していった。ではなぜ征服する民族と被征服民族の差が生まれたのか。それは人種の優劣ではなく、たまたまその民族が居住していた地理的環境に依存するものである、ということをさまざまな観点から論証している。たとえば農業や畜産業に適した動植物がたまたまユーラシア大陸に存在し、それが大陸を東西に伝播しやすかったことなど。大いに知的好奇心を刺激してくれる一冊。

 

矢野 佳彦 (ゴールドマン・サックス証券株式会社投資銀行部門M&A統括責任者)


10 AUG 2016
 

吉田秀和全集第17巻「調和の幻想」 ―  吉田秀和 

泰西泰東の絵画や建築物の評論。著者はじっくりと対象物を見つめ、観察眼を鋭く駆使して精確なことばで描写する。そこから、何かしら「ふつうでは説明のつかない」疑問を見出す。この疑問から出発する著者の闊達な思考に、しなやかで精緻な文章が寄り添って生き生きと展開され、やがて豊穣で穏やかな広大さを持つ深淵へと読者を誘う。観念的な精神論は排され、「自分の見たもの」の意味を自ら反芻し徹底的に吟味しながら読者とともに考えを進める。この本は、「優れた物の見方(「仕事」)は、厳しい自己批評と訓練を経た高度な知性、経験に基づく豊かな感受性、そして何より対象への忍耐深い愛情を必要とする」という真理を読者の眼前で実践した驚くべき作品である。日本語で書かれた文章の中でも最高峰に属する美しさ。18巻の「セザンヌ」もすごい。一冊の本が呼び起こす感動は深く人生観を変える。

 

小林 悦子  (ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社専務取締役)


08 AUG 2016
 

天才たちの誤算 ドキュメントLTCM破綻 -  ロジャー・ローウェンスタイン

リーマン・ショック・コンフィデンシャル  - アンドリュー・ロス・ソーキン

今の金融を知るためにも、その土台となっている過去の大きな出来事を学ぶ意義は大きいと思います。どんな優秀な人でも失敗や挫折があるように、金融の世界でも1998年と2008年にそれまでの常識を覆す大きなショックを経験しました。今回の本はそれらのショックが起こった背景やその頃の市場についてかなり詳細に書かれており、臨場感満載です。過去に学びそれらを将来に生かすためにも、私も折に触れて読み返しています。

賢者の投資 金融危機の歴史に学ぶ  -  古賀信行・佐々木文之
これもリーマンショック、LTCMショックも含めた長い金融危機の歴史に関する本ですが、時間がない人にとってはこちらがお勧めです。仕事をしているとどうしても「今」や「今後」に目を向けてしまいがちですが、「歴史」を学ぶ重要性を忘れてはいけないと思います。歴史的教訓を学び、考え方を学ぶ。それが将来に対する自分の洞察力に繋がると思っています。

 

ベンジャミン・ファーガソン (ゴールドマン・サックス証券株式会社証券部門マネージング・ディレクター)


08 AUG 2016
 

No Place to Hide: Edward Snowden, the NSA and the US Surveillance State by Glenn Greenwald

Greenwald was The Guardian reporter chosen by Snowden to break the story of the NSA’s vast powers of internet and smartphone surveillance.  He painstakingly analyzes the NSA programs leaked by Snowden and starts a debate on the political, media and civil rights issues the programs have created.  Greenwald’s account is a suspenseful and lively read.  It also does a great job of explaining the technical details of various programs in accessible language. 

Nineteen Eighty-Four by George Orwell

With the context of the Snowden leaks and NSA programs, I re-read 1984.  Orwell’s dystopian 1950’s masterpiece proves more prescient today than 1984.  It resonates in our world of disaffected politics, state-sponsored surveillance and geopolitical tension.  One thing Orwell got wrong: His ubiquitous telescreens used by big brother to monitor citizens are a considered a threat by the main characters.  Today, we happily drop a GPS enabled smartphone with video / audio components and geo-tagging into our pockets that can easily double as a tool to monitor every move in our lives.