|
昨年、ゴールドマン・サックスの企業文化と精神を色濃く体現した人物が、この世を去りました。
当社の上級会長であり元シニア・パートナーのジョン・L・ワインバーグ氏が亡くなったのは、昨年8月のことです。ワインバーグ氏は、56年以上におよぶ在籍期間中に顧客と長期にわたる信頼関係を築き、彼のリーダーシップによって当社の名声は世界的に高まりました。ワインバーグ氏の示したゴールドマン・サックスとその企業文化に対する責任感の根底には、奉仕への志と個人を超えた理想がありました。彼は明確なビジョンを持ち、常に周りの人々に自信を与え、その明晰な思考や生涯を通じて示した誠実さは、計り知れないものがありました。
社員同士が助け合い、多岐にわたる全社横断的な委員会やタスク・フォースに参加し、自分たちの部門だけでなく会社全体のことを考える、そしてその職業倫理をコミュニティや国を越えて拡げていく。そうした社員の輪を形成する上で、ワインバーグ氏は欠かせない存在でした。
ワインバーグ氏が身をもって示した「奉仕」の文化はさらに発展し、今日、後継者によって受け継がれています。
当社で7年間会長兼CEOを務めたハンク・ポールソン氏は、アメリカ合衆国第74代財務長官に任命されました。彼に負うところは各社員それぞれ異なりますが、その尽きることのない情熱、思慮深い助言、持ち前のリーダーシップは全社員から慕われていました。ポールソン氏は好調期および低迷期を通して、ゴールドマン・サックスを率い、ITバブルの崩壊時には、当社および業界の多くの企業に対して、あえて厳しい問いかけを行いました。そして自分自身についても、こうした厳しい精査の対象としたのです。
ポールソン氏は、同氏の前任者4名と同様、公職を通じて一石を投じる決心をしました。私たちは彼を誇りに思い、成功を心から願っています。とはいえ、多くの点において、ポールソン氏の決心は彼固有のものではありません。当社の社員は若手から幹部に至るまで、会社の業務または個人の生活を通して、変革を実現することに情熱を注いでいるからです。
当社のコミュニティ・チームワークス(CTW)活動は昨年、10周年を迎えました。この年、当社の社員は830以上のコミュニティ・パートナーと、9,400件のプロジェクトを通してボランティア活動を行い、援助を必要とする60万人以上の人びとに支援の手を差し伸べました。毎年4月から8月のあいだ、当社の社員は日々、子供やお年寄りとともに時間を過ごしたり、低価格住宅の建築の手伝いや学校で児童を指導したり、または公園を清掃するなど、あらゆる方法で地域社会への奉仕活動を行っています。
ボランティア活動の効果を数値化することは可能ですが、こうした活動が当社に与える影響は数字では計りえないものです。社員が、ボランティア活動を通じて社内のみならず、地域社会の福祉のために責任を共有するという意識を高めることができます。CTWへの参加は義務ではありませんが、2006年には約1万8,000人の社員が活動に参加しました。
当社のビジネスを直接のきっかけとした活動も、公的奉仕としての評価を受けています。チリのティエラ・デル・フエゴで68万エーカー (約2,750ku)におよぶ生態学的に貴重な土地を寄付したことが評価され、昨年11月には国務長官から優良企業として表彰されました。当社が、環境上保護されるべき森林地区を担保に含む不良債権ポートフォリオを購入したのは、2002年のことです。この貴重な土地を保護すべきと判断して、野生生物保護協会(WCS)とともに、南アメリカ南端の生態系の多くを保護する協力関係を発表しました。公的機関と民間企業の前例のない連携により、ゴールドマン・サックスとWCSは、チリの自然保護団体やその他のパートナーと協力して、世界に誇るべき自然保護区を設立し、貴重な土地を保護することを目指しています。
当社がこの2年間、欧州6カ国の政府と協力して取り組んできた、予防接種のための国際資金調達スキーム(IFFIm)も、昨年ようやく実を結びました。これは、各国政府からの複数年にわたる資金拠出を裏付けに資本市場で債券を発行し、開発途上国70カ国の予防接種プログラム向け資金を安定的に供給するという革新的なストラクチャーです。これによって、今後10年間に500万人の子供たちの命が救われると見込まれています。IFFImは、重要な社会問題の中に資本市場が解決できるものがあることを示す重要な一例です。
このような取り組みは、特に環境分野で顕著に見られます。昨年、当社は炭素排出権取引市場におけるトレーディングを拡大し、排出権の売買に加えて、プロジェクト毎の排出権売買と投資、排出リスクのプライシングを新たに開始しました。こうした新市場における革新的なトレーディングは、世界的規模の異常気象問題の有効な対策の一つになる可能性があります。
最後になりますが、市場や経済圏の統合、交通網や通信網の発達、および世界中の資本市場の発展を踏まえると、ゴールドマン・サックスは金融の進化、イノベーション、そして経済成長を促進する触媒としての役割を果たすうえできわめて好位置につけていると言えます。
私たちは、経済・金融システムの再編を図る先進国や開発途上国の多くと協働できることを誇りに思っています。社員の持てるスキルやノウハウを通じて、当社は最も生産的な用途へ資本を効果的に分配する、活力のあるダイナミックな市場育成に貢献していると確信しています。こうした市場が、持続的な経済成長と安全保障につながる重要な先駆けとなることは、多くの人びとが世界中で市場発展の恩恵に浴していることからも明らかです。
|