株主の皆様へ
前回のご挨拶の中で、市場環境が比較的良好だった2007年上半期とは一変し、下半期はボラティリティーが大幅に拡大するなど、市況が急激に悪化した旨をお伝えしました。以降、世界の金融市場は、荒れ狂う暴風雨のような異常事態に次から次へと見舞われました。最も深刻な問題は昨秋、恐怖とパニックが全世界に波及して資金供給が途絶し、世界経済の悪化がより広範囲に広がったことです。
株式市場は世界各地で2008年に30%から60%の下落を記録し、クレジット市場は事実上、凍結しました。複数の大手金融機関が、政府や民間セクターの手により救済され、あるいは破産を申請する事態となりました。数十万人が職を失い、クレジット関連の損失は1兆ドルを超え、わずか数カ月の間に30兆ドル近い市場価値が消滅しました。
私たちはみな、こうした事態から何らかの形で影響を受けました。申し上げるまでもなく市場は循環するものであり、楽観と繁栄の時代も、悲観と不安定さに一瞬にして飲み込まれてしまう可能性があります。しかし今回の金融危機の原因と影響は多岐にわたり、影響の深刻さも桁外れの大きさとなりました。
これまでにも申し上げてきましたように、私たちはゴールドマン・サックスのリーダーとして、当社が逆境に対処できるよう万全の備えをすると同時に、景気悪化の影響を最小限に抑え、可能な限り市場回復でもたらされるビジネス機会を積極的に捉えていく体制を整えておく責任があると考えております。最近の市場環境は、140年間におよぶ当社の歴史の中でもまれに見る試練の時期ではありますが、当社は2008年を黒字で乗り切っただけでなく、当社の企業文化、顧客フランチャイズそして戦略が、きわめて抵抗力の強いものであると証明されたことをここにご報告いたします。
この非常に困難な環境において、純収益は52%減の222億ドル、純利益は80%減の23億ドルとなりました。希薄化後普通株1株当たりの利益は4.47ドルで、平均自己資本に対する利益率は4.9%でした。1株当たりの簿価は2008年度中にも増加し、上場来年率19%(複利ベース)の伸びとなっています。
今年は、まず、最近の出来事がゴールドマン・サックスや私たちの業界にどのような影響を及ぼしているかとい点について取り上げ、私たちの統合ビジネスモデル、多角的な収益ミックス、そして徹底したリスク管理によって、当社が将来的にいかに優位な地位にあるかという点についてご説明させていただきます。最後に、レジリエンシー(回復力)に富む当社の企業文化と顧客重視の姿勢が、今後も当社の長期的成功にとって最も強力な触媒であり続ける点について触れたいと思います。
適合の歴史
今日の困難に直面する中で忘れてはならないのは、ゴールドマン・サックスの歴史の中で、多くのチャンスと成功がこのような困難な時代にもたらされたということです。
1990年代の終わりに勃発したアジア通貨危機の際には、個人向け債権と不動産資産に数件の大型投資を行いました。1998年、ロングターム・キャピタル・マネジメントの破綻をきっかけとする混乱の後、債券市場におけるマーケット・シェアを拡大しました。テレコムおよびITバブルがはじけた後には、プライベート・エクイティとメザニン債への投資を強化しました。エンロン破綻により電力セクターで資本不足が起きた際は発電プラントに投資し、経常的な取引収益と電力売買契約の再編による恩恵を享受しました。いずれの場合も、ゴールドマン・サックスは、市場の過渡期において新たなビジネス機会を見出した事例と言えるでしょう。
このように、私たちは目まぐるしく変化する市場環境に、自らの体制を幾度となく適応させてきたのです。過去20年間、私たちは困難な状況に直面しながらも、お客様のニーズに最も効果的にお応えできるよう、抜本的な変革を続けてまいりました。
資本基盤の強化と資金調達方法の一層の多様化が必要になったとき、私たちはプライベート・パートナーシップから上場企業へと組織を変更しました。規模の重要性が高まったときは業容を拡大し、比較的小規模な企業からフォーチュン100社の仲間入りを果たしました。お客様からさらに統合的なアプローチを求められた際は、組織再編を断行し、M&Aのアドバイスから資金調達、共同投資まで包括的に提供できる企業へと脱皮し、お客様の目標実現のために資金を提供できる体制を整えました。さらに全世界で市場の自由化が進展し成長が加速するにつれ、私たちは主に米国を基盤とする企業から、真の意味でのグローバル企業に生まれ変わりました。
こうしたいずれの事例においても、当社の戦略を疑問視する声が上がりましたが、私たちのフランチャイズと企業文化はより強力なものになりました。その第一の理由は、私たちが常にお客様との間に強い信頼関係を構築し維持しながら、市場の構造変化に随時適応することを重視していたことにあります。
銀行持ち株会社
変化に対応し続けてきた当社は、2008年に銀行持ち株会社(BHC)に移行しました。これは、連邦準備理事会の監督下に入ることを重視する市場の声に応えるとともに、資金調達の手段を広げることを目的としています。
銀行持ち株会社になることで、世界をリードする投資銀行、証券会社、投資運用会社としてフランチャイズを成長させるという当社本来の使命は変わることはありません。
現時点で多くの銀行持ち株会社が、商業銀行、プライベート・バンクもしくはパーソナル・バンク、信託銀行、カストディアン・バンク、それに資産運用など、特定の金融サービスに強みを持っています。ゴールドマン・サックスの強みは、長きにわたって主に機関投資家からなる顧客基盤に対し、アドバイザー、資金提供者、マーケット・メーカー、資産運用者、共同投資家として提供してきたサービスと商品にあり、これは今後も変わることはありません。
銀行持ち株会社への移行の一部として、私たちはゴールドマン・サックス・バンクUSAの規模を拡大しました。2008年末時点の同行の保有資産は約1,500億ドルとなっており、2009年にかけて、当社のプライベート・ウェルス・マネジメント・ビジネスまたは販売会社を通じた預金の自然増に加え、金融機関の買収により同行の預金を拡大させることで、資金調達基盤の一層の多様化を図る所存です。他にも、かつて2002年にウィリアム・ストリート・プログラムの創設を通じて融資能力を向上させることに成功したように、革新的手法も目下検討しています。
資本購入プログラム
ゴールドマン・サックスは、金融システムのより幅広い安定化の支援を目的とした、米財務省の不良資産救済プログラム(TARP)の資本購入プログラムに参加し、100億ドルの資本注入を受けました。この資金に、TARPの資本注入を受ける3週間前に調達した107億5,000万ドルを加えて、バランスシートはさらに強化され、お客様への資金提供能力および市場への流動性提供能力が向上しました。当社はTARPの資本注入を受けた責任を非常に重く受け止めており、政府によるこうした施策が金融システムの基本的な安定化に果たす役割の重要性を認識しております。
当社は、TARP資金が決して恒久的資本を意図したものではないと考えています。この資金を米国経済の支援のため他所で有効に活用していただけるよう、規制当局および米財務省の支援を得ながら、状況が許す限りにおいて、米政府への公的資金返済に努める所存です。
デレバレッジング・サイクル
現在デレバレッジング・サイクルのどのあたりにさしかかっているかを考えるのは重要です。私たちは、住宅市場を震源とする景気悪化には少なくとも5つの異なる局面があると考えています。まず第一にあげられるのは、米国の住宅ローン危機です。当社は個人向け住宅ローン組成ビジネスへの参入を手控え、またリスク・エクスポージャーの管理を積極的に行っていたため、この部分では影響を免れることができました。
第二の局面は、広範囲に及ぶクレジット関連市場があげられます。M&Aに強みを持つ当社は、数多くのレバレッジド・ローンを保有していました。市況の悪化とともに、ローン・ポートフォリオには損失が発生しましたが、エクスポージャーを注意深く監視し、積極的にエクスポージャー圧縮に取り組みました。
第三は、世界の株式市場と他の資産への影響です。共同投資は当社戦略にとって必要不可欠であり、すべての資産を時価評価するため、当然ながら株式などの資産クラスで市場の大きな変動にさらされました。しかし長期的な観点から投資ビジネスを適切に運営し、サイクルを通じて市場を上回る実績を残しています。
商業用不動産ローンの証券化は依然困難となっており、空室率も増加傾向にあるため、商業用不動産も打撃を受けています。当社も商業用不動産資産のポートフォリオで損失を計上しましたが、昨年1年間でこのセクターへのエクスポージャーを縮小しました。
そして、おそらく最終局面にあげられるのは、消費者信用サイクルです。この分野においては、当社が直接保有するクレジットカード、自動車ローン、ホーム・エクイティ・ローンその他の消費者ローンの大きなエクスポージャーはありません。
顧客フランチャイズ・ビジネスの世界的分散
ゴールドマン・サックスには、この変動の時代に市場がいかに進化しようとも変わることのない特質がいくつかあります。その中で特に重要なのが、全世界のフランチャイズをカバーする、バランスよく分散された収益源の重視、特に経常的な手数料ベースのビジネスを重視しています。
投資銀行部門においては、当社の中核であるアドバイザリー業務および引受業務全般で2008年は案件数が減少しましたが、公表された世界のM&Aランキングにおいて第一位の座を確保しました。私募発行や株主割当など、リーグ・テーブル外業務が、株式引受業務の収益に占める割合が大幅に増加しました。さらにアドバイザーおよびリスク管理者としての役割を通じて、事業法人のお客様に効果的なリスク管理ソリューションを提供しております。
セールスおよびトレーディング業務では、第4四半期に急激な落ち込みがあったにもかかわらず、グローバルな事業展開による分散効果が大きく寄与して通年で黒字を確保しました。
債券・為替・コモディティ部門では、為替、金利、コモディティなどのマクロビジネスの業績が好調で、過去最高を記録するビジネスもあり、資産価格の下落圧力とクレジットおよび住宅ローン関連の損失が相殺される結果となりました。株式部門は世界的な株式市場の落ち込みと当社の自己勘定トレーディング業務での損失にもかかわらず、過去2番目の年間純収益を記録しました。お客様の取引が高水準で推移したため、今年度は現物およびデリバティブ取引で多大な収益機会を得ることができました。
株式価値の大幅下落により、プリンシパル・インベストメント業務にとっては特に困難な1年となりました。しかし、質の高い投資先を抱えた当社のポートフォリオは、最近の株式市場の下落から想定されるよりも良好な結果を残しています。不動産投資業務では、ファンダメンタルズの悪化で短期的にさらにバリュエーションが低下しましたが、当社はサイクルを通じてはアウトパフォームする自信を持っています。
資産運用業務は、商品と地域の両面で最も多角化した部門の1つです。長期的実績と強固な販売関係を活用して、引き続き運用資産を拡大させてまいります。
プライベート・ウェルス・マネジメント業務では注目すべきビジネス機会が生まれています。この業務では、当社の投資アドバイザーが、ゴールドマン・サックスの有する最高水準の知的資本を充分に活かし、プライベート・バンキング、信託サービス、ウェルス・プランニングといった各種業務を備えた、フルラインの資産運用アドバイザリービジネスのためのプラットフォーム構築を目指しています。
ヘッジファンド業界の激変により、証券関連サービス業務も過去6カ月間大きな変化に見舞われましたが、この極めて困難な1年を通じて当業務を厳格に管理することで、過去最高の成績を残すことができました。パフォーマンス低下と解約の増加により、業界全体としての運用資産は2009年に減少すると予想していますが、プライム・ブローカレッジ業務は引き続き当社のフランチャイズにとって中核業務であるため、市場の変化を反映した洗練されたビジネス・モデルへの改良を進めてまいります。私たちは今後もマーケット・リーダーの地位を維持し、親密な顧客関係、充実した証券貸借機能、そして先進的なテクノロジーにより、同業務は引き続き当社に安定した収益機会をもたらしてくれるでしょう。
バランスシートの強化
当社の相対的競争力を高める重要な要素はリスク管理の重視です。
私たちはかねてより、新たにエクスポージャーを抱え込むことなくリスクを完全に除去する方法は、資産売却以外にないと考えてきました。確かに多くの市場参加者が市場価格は投売り価格であるとみなす中、年間を通じて資産売却を進めていなければ、当社の業績は大幅に悪化していたことでしょう。今は、同じ資産クラスの価格下落による将来的な損失にも左右されることはありません。
当社は第4四半期だけでバランスシートを20%近く圧縮しました。このバランスシート圧縮は広範囲の資産にわたっており、流動性の高い低リスク資産に集中したのではありません。バランスシートの圧縮と、210億ドル近い新たな資本注入によって、調整後およびグロス・レバレッジ率は40%以上低下し、Tier 1自己資本比率は2008年第2四半期末の10.8%から年末には15.6%まで上昇しました(注)。さらに第4四半期には余剰流動性プールを平均1,110億ドルまで引き上げました。
リスク調整後の資本水準の向上、悪化した資産へのエクスポージャーの低下、また限定的な消費者向けローンへの直接的エクスポージャーなどの点を考慮すると、今後起こりうる厳しい状況への対応やまたビジネス機会をつかむ上でも、当社は有利な位置にあると考えております。
(注)当社のTier 1自己資本比率に関する詳細につきましては、「財務情報 -経営陣による討議と分析 - 自己資本 - 連結自己資本規制比率」をご参照ください。
2008年の教訓
2008年以降に起こった出来事のキーワードはリスク管理です。当然ながら当社がまったく誤りを犯さなかったわけではなく、もう一度やり直したいと思う決定もいくつかあります。しかし大きな潜在的エクスポージャーの処理方法を改善し、時価会計基準の厳格な適用およびリスク管理機能の独立により、当社の体質は強化されました。
第一に、私たちはまず過大なエクスポージャーを取らないよう留意することに努め、可能な限り、かつ、合理的であると判断される場合はそうした過大なエクスポージャーの削減に努力しました。
第二に、金融資産と負債を現在の市場価値で測定する時価会計が、信用危機を悪化させている主要な原因の1つだという主張を何度も耳にしましたが、私たちの見解は異なります。リスクの効果的な管理には、資産と負債、そしてポジションとコミットメントの適切な評価は必要不可欠なのです。
最新の市場価格で日々ポジションの値洗いを実施することによって、当社は悪化しつつある市場や商品のリスクを早期に減らす決断をしました。このプロセスは困難で時に苦痛を伴いますが、これは金融機関が遵守するべき規律だと信じています。
最後に、私たちはリスク管理とコントロール機能の独立性を重要視しています。同様に、リスク管理者は収益部門における対応相手と少なくとも同等の地位に置かれることも重要であり、リスクの限度をめぐって評価や意見の相違がある場合は、リスク管理者の見解が優先されるべきであると考えています。
当社の企業文化の強み
2008年は当社の社員にとって試練の年となりました。数十年にわたるキャリアを有する者にとっても、最近入社したばかりの者でも、金融業界の歴史の中で最も困難な時期の1つに遭遇したことに変わりはありません。
この1年を通じて私たち2人は、各フロアに頻繁に顔を出すよう心がけました。新人からベテランの社員にいたるまで、皆進んで自分の考えや意見を示してしてくれました。当社の社員は会社のことを真剣に考え、社員の一人として真のオーナーシップを感じています。社員は、お客様が経済や財務上のさまざまな問題に立ち向かっていることを理解し、その間ずっと、徹底したお客様第一主義を貫いてまいりました。私たちはこのような社員と共に働けることをこれほど誇りに思ったことはありません。
市場がこのような状態にあると、近視眼的な思考にとらわれがちですが、当社の状況は全く反対で、2008年末に、新しいマネージング・ディレクターとパートナーを発表しました。この作業に要する膨大な時間と労力を考えると、このプロセスを先延ばしにしたほうがよいと考える人もいたでしょう。しかしこの最も困難な時期にあっても、あらゆる部門と地域の社員が、ゴールドマン・サックスの次世代を担う指導者の選出に厭わず時間を割いたのです。
これまでの不況時と同様、このような時期にこそ強力な指導者が生まれます。当社の企業文化は、自ら問いかけ、精査し、その考えを組織全体に伝えることの出来る人物によって体現されているのです。
このような時期に企業文化が試されるわけですが、チームワーク、高潔性、卓越性、それにパートナーシップといった精神がゴールドマン・サックスの競争力の源であることに変わりはありません。
当社において26年にわたりキャリアを積んできたジョン・ウィンケルリード氏が引退を決意しましたが、彼はこれまでのキャリアを通じて、当社と企業文化に類まれな貢献をしてくれました。彼は数々の主要部門において要職を歴任し、世界的な顧客フランチャイズの強化に尽力し、ゴールドマン・サックスの多くの指導者に薫陶を施しました。私たちはゴールドマン・サックスに対する彼の貢献に心から感謝の意を表します。
「10,000 Women(1万人の女性)」プログラム
当社の世界的イニシアチブ「10,000 Women」ほど雄弁に、私たちの価値観を物語るものはありません。2008年3月に、当社は今後5年間で1億ドルを投じて、世界中の教育機会に恵まれない1万人の女性にビジネスおよび経営学の教育機会を提供すると発表しました。
私たちは、世界中の大学やNGOとパートナーシップを結び、彼らと共同でこの取り組みを進めています。例えば各大学と協力して5週間から6カ月の認定プログラムを設け、マーケティング、会計学、市場調査、ビジネスプラン作成、戦略立案、資金調達、eコマースなどの授業を展開します。このように短期履修が可能で革新的な認定プログラムは実務的で柔軟性に富み、経済的な問題や家庭の事情により通常では従来のビジネス教育を受けられない多くの女性にも門戸を開放します。
2008年末までに、当社はアフリカ、アジア、中東、ラテン・アメリカ、米国において支援対象となる女性への教育のため、32の機関と提携を発表しました。
既に締結されたパートナーシップの事例として、ウォートン経営大学院とアメリカン大学カイロ校による500名の女性を対象にしたリーダーシップ・マネジメントに関する認定プログラムや、ミシガン大学がスクール・オブ・ファイナンス・アンド・バンキング(ルワンダ)と共に提供する300名の女性を対象としたビジネスと起業に関する6カ月認定コースなどがあります。さらに米国にわずか2カ所しかない女性限定のMBAプログラムの1つを開設しているカリフォルニアのミルズ大学と協力し、特に学力優秀でありながら学位取得に経済的支援を必要とする女性に対し、授業料を全額免除し、メンタリングを提供する予定です。
10月には「10,000 Women」第一期生25名が、パンアフリカン大学(ラゴス・ナイジェリア)での起業マネジメント認定コースを修了しました。
「10,000 Women」のすべてのプログラムで、ゴールドマン・サックスの社員はメンターとして参加しています。オンライン・メンタリング・プログラムを利用して、終業後や週末に、奨学生の一期生と交流を図ったり、マンツーマンのメンタリングやゲスト講師を務めることもあります。
将来に向かって
今回の金融危機は歴史に深く刻まれるほどの事態となりましたが、私たちは、過去100年間に幾度か重大な市場の混乱が発生したことを忘れるべきではありません。人間の心理状態が意思決定に影響する限り、そして変革への意欲と快適な安定性を求める欲求との間の葛藤に向き合う限り、今回の危機は世界が立ち向かわねばならない最後の金融危機ではありえないのです。
私たちは金融システム全般に対する責任を負っていると認識しています。金融サービス業界には、市民からの信頼を回復し、金融システムが安定と活力を取り戻せるよう貢献するためになすべき課題が山積しています。政策決定者が重要な規制改革を検討している中で、ゴールドマン・サックスは建設的な役割を果たす所存です。
当社は今後も、世界中の高成長市場で強力なプレゼンスを保持したいと考えています。成長は鈍化しましたが、私たちは引き続き多くの新興諸国にビジネス機会があると見ており、現地でのプレゼンスと地域に関する専門知識や経験を活かすことで当社の新興諸国市場における見通しは達成できると確信しております。
当社は顧客基盤の開拓に特に注力してきました。当社の事業は全世界にあまねく広がり、深く根を下しています。私たちはさまざまな環境においても力強く成長してまいりました。そして最も重要なのは、市場への適合や課題に果敢に挑戦し、そしてお客様の目標達成に向けて意欲的に取り組む、才能豊かでひたむきな人材を、何世代にもわたって確保し続けてきたことです。
今後も環境が急激に変化し、さまざまな対応を迫られるでしょう。私たちの務めは、アドバイザー、資金提供者、マーケット・メーカー、資産運用者、共同投資家としての強みを活かして事業を発展させることです。こうしたビジネス・モデルと戦略の統合こそが、当社独自の強みなのです。
ゴールドマン・サックスは、短・中期的には市場の機会を十分に捉え、サイクル全体を通して株主の皆様に業界トップクラスのリターンを提供できる体制にあると確信しております。
ロイド・C・ブランクファイン
会長兼CEO(首席経営執行役員)
ゲーリー・D・コーン
社長兼COO(首席業務執行役員)
特別の記述がない限り、本資料中に使用されている「ゴールドマン・サックス」「私たち」「当社」などは、文脈に従ってザ・ゴールドマン・サックス・グループ・インクおよび、または世界中のその子会社、関連会社またはそのうちの一つまたは複数を意味します。